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第五回写真 旬の東京、この街に暮らしたい 第五話「歴史の道を歩いて多摩川へ」 五回連作のこのエッセー、最終回は多摩川をめざして散策してみよう。
マンションのある千鳥町あたりからは1キロちょっとの距離だから、格好の散歩コースといえるだろう。
下丸子の駅横からガス橋へ掛けるケヤキ並木の道を行くのもいいけれど、僕がお推めしたいのは、武蔵新田(むさしにった)の駅前を通っているくねくねとした旧道である。この道は往年の鎌倉街道の一つで周辺には南北朝時代の名将、新田義興(にったよしおき)ゆかりの史跡が点在している。昔ながらの店屋が軒を並べる通りを歩いていくと、義興を祭神とする新田神社がある。
義興は足利勢との合戦の際、多摩川を渡る舟の底に穴の仕掛けをされて、それが発端となって討死にした。その現場が「矢口の渡し」なのである。
ちなみに当時の多摩川の流れはいまよりも北側で、神社の裏手あたりにもとの渡しは存在したらしい。鎌倉街道をさらにずんずん進んでいくと、左手に義興勢の騎士を祀った十騎神社、古めかしい精螺工場の横を抜けると、やがて多摩川大橋の手前の堤に行き当たる。大橋が完成する以前の昭和24年までこの川岸に矢口の渡し場は置かれていた。
東京の川のなかで多摩川は、自然の川の姿がよく保たれている。ススキが繁る河川敷の小径を歩いていくと、近頃めっきり見かけなくなったトノサマバッタが足もとからあちらこちらへと飛び跳ねていく。子供の頃に親しんだ健やかな川景色がここには残っている。こんな川原を庭にできる住人が、ちょっとうらやましくなった。
コラムニスト「泉 麻人 <いずみ あさと>」

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