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第四回写真 旬の東京、この街に暮らしたい 第四話 「ぬめり坂の上の懐かしいお屋敷」 お屋敷町としての歴史が古い久が原には、おもしろい博物館がある。南久が原2丁目の「昭和のくらし博物館」だ。
博物館といっても仰々しい建物ではなく、か細い路地の奥にひっそりと建つ昔懐かしい日本家屋。
昭和26年に建築された民家をそのまま使って、各部屋に昭和30年代当時の生活用具や時代資料が展示されている。卓袱台を置いた茶の間、床下が貯蔵庫になった台所、玄関脇には小さな洋間も設けられている。家主だった小泉孝さんは都庁の建築技士をされていて、自ら設計を手掛けたのだという。娘の和子さんが現在館長を務めている。ふと、幼い頃のわが家にタイムトリップしたような心地になる、質素ながら、とてもいい博物館である。さて、この博物館の先から多摩川線の下丸子駅の方に下っていく坂には、なんとも印象的な名がついている。「ぬめり坂」-道標の謂われを読むと、かつてはのめって上り下りが難しい坂道で、あるとき付近の美しい娘が自ら坂の生き埋めになったところ、通行は容易になり町は繁盛した-なんていう、ちょっとシュールな伝説が存在するらしい。
傍らには藤森稲荷というのが祀られているから、これもぬめり坂に関係した神様なのかもしれない。坂下の環8通りの向こうには、豊かな木立ちに囲まれた光明寺が見える。
南久が原のこのあたりはなんとなく懐かしい雰囲気に包まれた一帯だ。
コラムニスト「泉 麻人 <いずみ あさと>」

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